はし藤本店で出会える木
はし藤本店では、漆塗り箸、木地箸、割箸を、常時約400種類(デザイン違い・サイズ違いを含む)展開していますが、その中でも特に注力しているのが木地箸(漆を塗っていない箸。商品により液体ガラス、ウレタン、オイル、蝋などで仕上げてあります。)です。
さまざまな木の箸を取り扱っていますが、1910年の創業以来、国産の杉割箸を販売し続けてきた当店としましては、日本の木にはこだわりがあります。
そこで、どんな木の箸があるのか、中には漆塗りの木地になっている木もありますが、国産材を中心にご紹介します。
1.針葉樹の箸 9種
針葉樹とは針のように細い葉っぱの木(イチョウは広い葉っぱですが針葉樹です)で、比較的まっすぐに伸びる木が多く、立ち木の見た目もてっぺんに向かって円錐型になることが多いです。
柔らかく、軽めの材が多いのも特徴です。
箸としては柔らかいゆえに少ししなってくれますし、箸先も少し太めに作られているものが多いのと、少ししなってくれるので接地面積が広く、麺類や鍋物など重くて滑りやすい食べ物に力を発揮します。
日本中で植林されている樹種が多いため、比較的価格が安い商品が多いのも針葉樹の箸で、漆塗りの箸がお好きな方でも、麺類や鍋物専用の「セカンド箸」としての利用に向いています。
杉・桧・ヒバは特にそうですが、水との親和性が良く、香りが豊かです。
また、洗ったあとの乾きが早いので、扱いがラクです。
桧は温泉施設などの浴槽に、杉は酒樽や味噌樽など、ヒバもまな板から風呂桶まで、古くから水回りで利用されています。
また、多少汚れたり小さな欠け程度でしたら紙やすりでご自身で簡単に直すことができるのも柔らかい針葉樹の箸の特徴の1つです。
一方、柔らかいということは、もし思いっきり噛んだりしたら、紙やすりでは直せないほどポッキリ折れてしまうかもしれないというリスクもあります。
(※もちろん、木である以上どんな樹種であってもそのリスクはあります)
でも5mm程度の折れなら、2本ともその長さに合わせて自分で紙やすりで整えられます。
削りすぎないように、#400くらいの仕上げ用の紙やすりがおすすめです。
はし藤本店での取り扱い樹種では、
杉、桧(ひのき)、ヒバ、一位(いちい)、椴松(とどまつ ※割箸のみ)、琉球松、唐松(からまつ)、栂(つが)、犬槇(いぬまき)
がそれにあたります。
杉、桧、ヒバは、吉野杉・屋久杉のように産地別に分けて販売していますが、樹種としてはそれぞれ1として、ここではカウントしています。
正確にいうと中国産材を高知で加工しているので、国産材ではないのですが、日本に自生する材としては榧(かや)の箸もございます。
また、これも国産材ではないのですが山形の木製サッシメーカーから出た米ヒバの端材で作った箸もございます。
ちなみに、割箸に関してはまっすぐに伸びる木は製材が比較的容易で無駄なく使用できることから、すべてが針葉樹です。
【能登ヒバの木】
2.広葉樹の箸 21種
広葉樹とは針葉樹の逆で葉っぱが丸味を帯びていて広いのが特徴で、上にも伸びますが横にも伸びるので、立ち木の形状は不規則になります。
比較的硬く重たい材が多いのも広葉樹です。
ただし、100円ショップでも売られている桐の材は例外的に軽くて柔らかい材です。
また、ホームセンターなどでよく売られているバルサは、日本で自生していないため国産材ではありませんが軽くて柔らかい広葉樹の代表的な樹種です。
残念ながらこの2種類については、はし藤本店では取り扱いがございません。
比較的堅い木が多い広葉樹の箸は、箸先まで細く削れるため、シルエットとしても美しく、焼き魚などの身をほぐして食べるなど細かい作業の食事に向いています。
木は時間とともに色が濃くなっていくものなのですが、広葉樹の箸は針葉樹の箸よりもわりと変化を感じやすいかもしれません。
水は染み込みづらいのですが、針葉樹のようにすぐに排出することは苦手です。
なので、針葉樹に比べて水洗い後の乾きはやや遅めです。
時間とともに食べ物による油も染みてきますので、気になる方はときどきクルミ油・えごま油・亜麻細いなどの乾性油を塗っておくことをおすすめします。
オリーブ油・パーム油・ひまし油などは不乾性油で、塗ってもずっとベタベタしてしまうのでおすすめいたしません。
もし不乾性油を使用する場合は、キッチンペーパーなどでよく拭き取るようにしてください。
乾性油は塗った後、そのまま数日乾燥させるのがベストですが、すぐに使いたい場合は同じように拭き取ってください。
はし藤本店での取り扱い樹種では、
山桜、朴、柿(黒柿)、欅(けやき)、櫟(くぬぎ)、真樺(まかば)、斧折樺(おのおれかんば)、ミズメ、りんごの木、みかんの木、柚子の木、藪椿、福木(ふくぎ)、赤木(あかぎ)、沖縄裏白樫(おきなわうらじろがし)、犬槇(いぬまき)、赤樫(あかがし)、鬼胡桃(おにぐるみ)、柞の木(いすのき)、御蔵島黄楊(みくらじまつげ)、御蔵島桑(みくらじまくわ)
がそれにあたります。
【欅の木】
3.竹の箸 2種
種類は基本的には孟宗竹(もうそうちく)と真竹の2種類です。
孟宗竹のほうが真竹よりも肉厚で箸に向いているので、多く使われており、はし藤本店の箸も多くは孟宗竹です。
真竹の箸は、奥出雲の古民家の囲炉裏の上で100年以上も燻されて出来た、古民家を解体しないと手に入らない稀少な材である「本煤竹(ほんすすたけ)」の百年煤竹箸と、徳島県産材で同地で育った藍で染めた箸の2点で、孟宗竹よりも硬い竹なのでぜひ比べてみてください。
特に百年煤竹は長年囲炉裏の煙で燻されて硬く締まっています。
表面の艶やかさを活かすような作りの箸が多いのは竹の箸の特徴です。
たとえば京都では、伐った竹を天日で干して白くした「白竹(しらちく)」、生えているうちから枝をあえて落とし、胡麻のような斑点模様ができるように育てた「胡麻竹」などです。
竹は繊維が真っすぐなため、しなるのですが折れづらいのが特徴(風に吹かれる竹のあのイメージです)で、持ち手部分から箸先までまっすぐ細く仕上げることができます。
細い竹箸は、箸としてのシルエット、持ったときの手から箸にかけての品の良さ、ともにダントツです。
竹は日本中に分布していますが、特に関東以西に多く古くから竹の産地があります。
各産地には竹細工の職人も多くいましたが、近年ではその需要も減少し、職人は高齢化し、後継者も不足しています。
さらに竹の繁殖の早さから利用されない竹林が広がっているにも関わらず、その管理をする人も伐採する人も減ってしまったために放置竹林が増えてしまい各地で問題化しています。
竹の割箸を作る工場もかつては数か所存在していたのですが、現在ではほぼゼロです。
はし藤本店で仕入れている国産竹割箸も、はし藤本店だけのために1人で作られているので、とても量産は出来ない状況です。
ちなみに、日本のスーパーで売られているタケノコはその多くが孟宗竹です。
真竹との見分け方は節に入ったラインの本数で、孟宗竹は1本で真竹は2本です。
最後に.
日本では箸を作る職人さんや作家さんがどんどん減っています。
木工職人さん・作家さんはたくさんいるのに・・・。
私たちの仕入れ先でも、作っているもののメインが箸ではないという方はたくさんいます。
大工さんであったり、箸以外の木工品であったり。
たとえばスプーンや器は1つ作れば1つの商品になります。
ところが箸は、2本同じものを作ってようやく1つの商品になります。
手間も時間もかかる、なのに金額が安い。
しかも、箸は細すぎてその木の魅力も作り手の想いも表現しづらい。
大変なんです、作るほうは。
それでも木を愛し、箸に想いを表現してくれる職人さんや作家さんがいらっしゃいます。
わたしたちもそんな日本の木と日本の職人さん・作家さんの箸を販売し続けていきたいと思っています。
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