“とーりょー”と“わけぇーの”が建てる杉割箸の家
“とーりょー”と“わけぇーの”は杉の割箸(おもに天削箸)で家を建てる大工職人です。
日本の割箸の多くは奈良県の吉野地方で作られています。
もともとは「吉野杉」が割箸の材料で、吉野杉は良い杉樽を作るために奈良県の川上村で確立された育林技術が、東吉野村、黒滝村と伝わっていって誕生したブランド杉です。
吉野の割箸はその端材を利用したことが発端でした。
その後、時代とともに杉樽の生産は減少し、吉野杉は建材の材料へとうつり変わり、割箸の材料も建材の端材(背板)に変わりました。
現在では吉野杉で家を建てる人は少なくなり、建材としての需要が減ったため、割箸の需要はあるのに材料である背板の供給も少なくなりました。
(同じ建材でも、フローリング材や集成材としての需要はありますが、これらは背板の部分まで使え、割箸用にするよりも高く取引されるので、割箸用にはまわってきません)
やがて割箸の材料は吉野だけにとどまらず、三重や和歌山を含む紀伊半島全域から集めないと作れないようになり、とうとうその紀伊半島産すらままならない状況です。
家を建てるための材料として杉の需要が無いから、需要はある割箸の材料までもないというこの現状を“とーりょー”は嘆いています。
それでも“とーりょー”と“わけぇーの”は、今日も2人で杉割箸の家を建てています。
ただし、杉割箸ははし藤本店でも貴重なので、これは製品にはならないような欠けや虫食いの穴などがあって商品にはならないものを利用しています。
割箸大工
・とーりょー
杉割箸一筋ウン十年のベテラン大工。
最近は花形の箸割り作業を“わけぇーの”に譲って、自分は裏方の材料運びもこなす。
今でも2膳を片腕で軽々運ぶ。
“わけぇーの”に杉割箸建築の技術を継承したいと思っている。
ねじり鉢巻きに挟んでいるのはもちろんペンではなく箸。
昼休みが楽しみで仕方ないのだが、今日のお昼はスープカレー。。
・わけぇーの
最近“とーりょー”から材料作りを任されるようになった。
割箸を割るときは箸をヨコにして、上下に割るのが食事のマナーだが、家を建てる際は関係ないのでタテにして力任せに割っている。
本当は「力任せだけではダメだぞ」ということを、“とーりょー”は気づかせたい。
“とーりょー”にあこがれてねじり鉢巻きには箸。
だが、今日のお昼はサンドウィッチ。。
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